【障害者権利条約の審査・総括所見を活用した国内法制度整備事業タウンミーティングinぐんま】

【障害者権利条約の審査・総括所見を活用した国内法制度整備事業 タウンミーティングinぐんま】を開催しました!(2023.02.05)

 難しい名前のタウンミーティングですが、地域移行とインクルーシブ教育について、多くの皆さんと考える良い機会になりました。第1部の参議院議員の船後泰彦さんの基調報告では、昨年スイスのジュネーブで開催された国連障害者権利委員会の対日審査について、ジュネーブまでの移動の様子やケア体制、現地での活動状況、今後の方向性(勧告を制度転換にどう活かすか)などを伺いました。

今回の対日審査の総括初見では、日本政府に対して65項目の懸念と勧告が出されており、特に緊急措置を要するとされたものが19条の「自立生活と地域社会へのインクルージョン」(地域移行)と24条の「教育」(インクルーシブ教育)です。

19条については、日本では身体障害者7.3万人、知的障害者13.2万人が入所施設で生活しており、さらに入所待機者が全国で2万人以上いると言われていますが、入所施設・精神病院に頼らなくてもいい地域社会に向けて、障害児者の施設収容を廃止し地域生活支援にシフトすることが求められています。(これは第2部のシンポジウムでも議論になりましたが、そうはいっても、重度訪問介護サービスや緊急短期入所、自立生活センター(CIL)など地域資源が圧倒的に足りない現状をなんと関する必要があります。)

24条の関係では、日本では障害の有無で分離した特別支援教育が実施されていますが、分離特別教育の廃止と全ての障害児の普通学校への通学の保障、学校における就学拒否の禁止が求められています。
近年子ども全体の数が減少する中、特別支援学校・学級に在籍する児童生徒数は激増していて、群馬県でも未設置地域への特別支援学校の設置や特別支援学級の増設を図ってきた経緯がありますが、この特別支援教育制度自体が24条と相いれないと指摘されています。

他にも、
○「医学モデル」から「社会モデル」への転換
○政策決定過程における多様な障害者との協議の確保
○性別、年齢、民族、宗教、性自認との複合差別・交差差別の禁止
○すべての障害者に合理的配慮が提供されることの確保
○旧優生保護法における優生手術の被害者救済
など様々な内容が勧告されており、今回浮き彫りになった人権問題について、今後、政府や地方自治体、地域社会がそれぞれできることを実施していく必要があります。
 
第2部では、総括初見を受けて地域で何かできるのか。「総括所見を群馬で生かすためにー地域移行とインクルーシブ教育を考える」をテーマにシンポジウムを開催。

全国手をつなぐ育成会の田中正博さんからは、地域移行に必要な「地域生活支援拠点事業」の推進、レスパイトサービスの課題など、当事者やご家族の立場から必要な支援についてお話いただきました。「親なき後という言葉を親の立場から考えるだけでなく、障害当事者の立場からも考える必要がある」という言葉が印象的。

東京大学教授の小国喜弘さんからは、登校拒否・不登校児童生徒の推移や特別支援学級の現状、インクルーシブ教育の特徴などについてお話しいただきました。
説明の中で出てきた動画がわかりやすいです▼
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/32750?display=1
インクルーシブ教育は教育効果ではなくて、社会正義の問題。多様な差異の包摂は社会正義であって、「インクルーシブ教育で学力が下がらないか」といった議論は社会正義に反するんだ、という力強い意見はまさにその通りだな、と。

私もパネリストとして登壇させていただき、障害当事者やそのご家族からいただいている相談の内容や、県内に受け入れてくれる施設やサービスがないので県外に出ていかざるを得ないという事例(重度障害や行動障害のある方は断られてしまうケースがあります)などを紹介させていただきました。
地域移行といっても、そもそも地域資源が少ない中で施設や適切なサービスに繋がれない障害者がいるという現状からスタートする必要があります。
(そういった当事者やご家族の負担は本当に大変なものになっています。)

そのうえで、
○群馬県で重度訪問介護や自立生活センターが少ないのはどうしてなのか。(増やすにはどうしたらいいのか。)
○国立のぞみの園ともっと連携を図ることはできないのか。
○緊急短期入所受入を実施している事業者からは、常時定員に達していることが多く緊急時には定員を超えて受け入れなければならないケースもあるという現状を伺っているので、緊急受入やグループホームの体験利用などを進めるために他の自治体で実施している空床保障を群馬県内でも制度化するべきではないか。
といった問題提起や提言をさせていただきました。

同じくパネリストの高橋宣隆伊勢崎市議からは、インクルーシブという言葉が人によって解釈がバラバラなので、概念を共有したいという意見も。
インクルージョンはエクスクルージョン(排除)の反対語。誰も排除しない、排除されない社会を目指していきたいですね。

予定時間がオーバーするほど中身の濃いタウンミーティングでしたが、150人を超える満員で、多くの方々と課題や想いを共有することができました。
閉会後も自立生活センターや重度訪問介護を実施している事業所の皆さん、障害当事者やそのご家族の皆さんと色々と意見交換できて、学びと出会いが多い1日に。
このつながりは群馬の障害者政策を前に進める力になると信じています。


DPI日本会議、崔さんの報告より(インクルージョンのイメージ)